私が小学校を卒業した時(昭和18年)、
村の楊柳寺を中心に、だいたい60歳以上のお婆さんたちによる、
地蔵講という集まりがあるのを知りました。
月に1回寺に集まり、本堂で15畳いっぱいになる位大きな数珠を
南無阿弥陀仏の称号を唱えながらまわします。
これが終ると別の間で持寄りの茶菓で茶話会をして、
会が終了になるという集まりでした。
ある時、地蔵講の茶話会のなかで「○○家で朝ご飯を炊いたら、ご飯が赤色になり
全部捨てた」という話がでたことがありました。
昔からご飯が赤くなったら凶事の前兆と言われているので、
講の代表2人くらいで山形市内の「おなかま(占い師)」に
凶事とは何かを聞きにいったところ、
『「へら取り(一家の主婦)」のあやまちで火事が起きる』とのご託宜でした。
代表者はこのご託宜を村に持ち帰り、直ちに千度参りの準備にかかりました。
その日のうちに役員会を開き、日時を決め、隣告げの方法で千度参りを行うことが
村の皆に伝わります。
千度参り当日は、約35〜6人が寺に集まってきました。
司会役のお婆さんが、参集の御礼と千度参りの意義を述べます。
そして本堂に例の数珠を広げて皆で数珠を持ち、南無阿弥陀仏と称号を唱えながら
数珠を右回りに回すのです。
自分の手に親玉が来たら、これを捧げ持って礼拝します。
この輪が35〜6回まわったところで、司会者の合図で儀式は終了です。
次の日に行う、稲荷神社での千度参りへの参加を皆にお願いして、
その日は解散となりました。
当時、お寺を信仰している人と神社を信仰している人がいたため、
千度参りもお寺と神社で別々に行ったのだそうです。
千度参りのおかげか、無事火事は起こらずに済みました。
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